アイデアを創出する「思考の整理学」ノート法

「思考の整理学」は、創造的、独創的なアイデアを生み出すにはどうすればいいか、著者の外山滋比古氏の体験的手法がまとめらています。

本書で紹介されているノート法は、著者が20年以上続けている手法です。書き出した50冊以上のノートは、「わが思考、すべて、この中にあり」と思わせる内容だそうです。

著者の外山滋比古氏は、お茶の水女子大学などで教鞭をとられ、言語学を中心に数多くの著作を発表されました。著作のアイデアの元は、本書で語られているアイデア創出法にあるに違いありません。

本書から読み解けるアイデア創出のキーワードは、ノート法、寝かせる、メタ化の3つです。アイデア創出にはどのようなことが必要になるのでしょうか。

ノート法

「思考の整理学」のノート法は、手帖、ノート、メタノートの3つのノートを使います。手帖からノート、ノートからメタ・ノートへと情報を書き写しながら、アイデアを昇華させていきます。

手帖

素晴らしい思いつきは、いつどこから降って湧いてくるかわかりません。忘れてしまったら、せっかくのアイデアが無駄になります。思いついたら、すぐにメモする。これが重要です。どんなことでも気になることがあったらすぐに手帖に要点を書くのです。
手帖への記入は、次のように行います。

いちばん簡便なのは、手帖を持ち歩くことだ。普通の手帖でいい。ただ、一日ごとの欄をすべて、着想、ヒントの記入に使うのである。もちろん、日付もケイも無視する。スペースを節約しなくてはいけないから、細い字で、要点のみ簡潔に書く。一つの項が終わったら、線を引いて、区切る。一ページにかなりたくさんの思いついたことが書ける。
ついでに頭のところに通し番号を打っておくと、あとで参照に便利である。ついでに、日付も入れておくと、いつ考えたことかがはっきりする。

手帖の書き方サンプル

手帖への記入が終わったら、書き込んだ内容については、キレイさっぱり忘れてしまいます。

ノート

手帖に書きだしたことは、定期的に見なおし、おもしろいと思ったアイデアはノートに転記します。手帖に書きだしたときは、おもしろいと思ったことでも、時間が経過すると陳腐に思えてしまう。また、時間を置くことでアイデアが醗酵しはじめ、アイデアがさらに増幅することもあります。新しいアイデアや修正を含めてノートへの転記を行います。

手帖から転記するときは、1ページに1アイデアとなるように記入します。

別のノートを準備する。手帖の中でひと眠りしたアイデアで、まだ脈のあるものをこのノートに移してやる。このノートはあまりいい加減な安ものでない方がいい。わたくしは、英文日記を利用している。ケイと日付と欄外に英語のことわざがが印刷してあるだけで、手帖と同じように、いっさいを無視して、考えの温存の場とする。まずⒶには、見出しを書く。何のことか。あと手帖にあったことを箇条書きにして書き入れる。これがⒷの部分である。手帖には三つくらいの要点しかなかったものが、こうして整理しようとすると、五つにも六つにもなるというのが、寝かせている間に考えがふくらんだ証拠である。
Ⓒは、ノートに移した日付である。Ⓓは、手帖のときの番号である。Ⓔは関連のある新聞や雑誌の切り抜きなどがあれば、ここへ貼っておく。

ノートの書き方サンプル

筆者は、このノートを原稿依頼などが来た際に、参照するノートとしていました。パラパラとめくって、おもしろいと思ったものを元に原稿をおこす。利用したページは赤線などで目印を入れます。

メタ・ノート

イデアをさらに一段高いものとするために、もうひとつノートを準備します。植物は置く場所で育ち方が異なってきます。アイデアも同じようなものだと、筆者は言います。
ノートに書いたあとでも、アイデアは頭の中で変化していきます。さらにもう一度、別のノートに書き写すことによって、さらにアイデアの醗酵を進ませるのです。

まえに紹介したノートは一テーマ一ページをあてたが、このメタ・ノートは、ひとつのテーマに二ページずつあてる。見開き二ページが一つののテーマということになる。頭にテーマの題目をつけ、さらに通し番号をふることは前のノートと変わるところがない。ノートにあったことを整理して、箇条書き風に並べる。余白はあとの記入のためにゆったり残していくことがのぞましい。

メタノートの書き方サンプル

メタ・ノートはノートのアイデアをさらに抽象化をすすめて、より創造的で独創的なアイデアに昇華させるためのノートです。

ノート、メタ・ノートをより使いやすくするために、見出しの一覧をノートの先頭ページに入れておくとノートの使い勝手が向上します。

寝かせる

手帖からノート、ノートからメタ・ノートと、書き写しを進めていくと自然と時間が経過していきます。時間の経過が、アイデアを高める重要な要素と筆者は言います。

”寝かせる”のである。ここで素材と酵素の科学反応のが進行する。どんなにいい素材といかにすぐれた酵素とが揃っていても、一緒にしたらすぐにアルコールになるということはあり得ない。頭の中の醸造所で、時間をかける。あまり騒ぎ立ててもいけない。しばらく忘れるのである。”見つめるナベは煮えない”。

ノートなどにアイデアを書き終えても、新しい情報が私たちの頭の中を通過していきます。情報が頭を通過していく過程で、書きだしたアイデアが、必要な情報をどんどん取り込んでいきます。また、時間が経過しいくことで、書きだしたアイデアの不必要な情報はどんどん忘れ去られます。

新しく取り込まれる情報も、忘れ去れれる情報もすべて、自分自身の興味のあることやないことが基準となります。時間の経過とともに、どんどんアイデアが純化されていき、書き込まれたアイデアは創造的、独創的になっていくのです。

「創造的、独創的なアイデアを作り出すこと」は難しいことではありません。書き出し、そして、寝かせることで得られるアイデアは、あなた自身しか思いつかないものなのです。

発想が扱うものは、周知、陳腐なものであってさしつかえない。そういうありふれた素材と素材とが思いもかけない結合、化合をおこして、新しい思考を生み出す。発想の妙はそこにありというわけである。発想がこれほどまでに問題にされながら、その母体、ならびに作用についてほとんど考えられていないのはおかしい。発想のおもしろさは、化合物のおもしろさである。元素を創りだすわけではない

メタ化

メタ化とは、アイデアの抽象化を進めて、より純度の高いアイデアに変化させることです。

私たちが普段触れる情報は、一次情報です。「犯人が捕まった」や「株価が下がった」などがそうです。「犯人が捕まった」という一次情報から考えられる二次情報は、犯人の経歴や類似事件などです。「株価が下がった」の二次情報は、日銀総裁の発言や原油価格の下落などが考えられます。

特定の情報から、注目すべき事項のみを残して、情報の純化を進めること。これが抽象化です。抽象化するとき、何に注目するかは個性ですから、思い切ってどんどん余計な情報を捨てても構いません。二次情報から三次情報へと、さらに抽象化を進めていくと、「創造的、独創的なアイデアを作り出すこと」が可能になるのです。

情報をメタ化する手法として、要約、書く、しゃべるなどが紹介されています。

要約は情報の不要な部分を削りとってしまう方法です

第一次情報を第二次情報に変える方法として、たとえば、ダイジェスト、要約がある。詳細を省いて、要点をまとめる。これは昇華よりむしろ、圧縮というべきかもしれないが、すでに情報となっているものに、さらに人為を加えるという点では、第二次情報である。

「書く」は、文字として書き出すこと。

書き進めば進むほど、頭がすっきりしてくる。先が見えてくる。もっともおもしろいのは、あらかじめか考えても見なかったことが、書いているうちにふと浮かんでくることである。そういうことが何度も起きれば、それは自分にとって出来のよい論文になると見当をつけてもよかろう。書き出したら、あまり、立ち止まらないで、どんどん先を急ぐ。こまかい表現上のことなどでいちいちこだわり、書き損じを出したりしていると、勢いが失われてしまう。

「しゃべる」は、ことばとして口にしてみること。

調子に乗ってしゃべっていると、自分でもびっくりするようなことが口をついて出てくる。やはり声は考える力を持っている。わらわれは頭だけで考えるのではなく、しゃべってしゃべりながら、声にも考えさせるようにしなくてはならない。

このような手法を使って情報のメタ化を進めていきます。

思考の整理

思考の整理とは、情報を書き出し、寝かせることで情報の醗酵させ、メタ化でアイデアを昇華させていく。自分を通り過ぎていく様々な情報が、自分というフィルターを通って創造的、独創的なアイデアに変化していきます。

本書では、創造的、独創的なアイデアを体系的に生み出す方法を整理する方法論でレクチャーしています。メタ化を進めていく過程においては、自分というフィルターを最大限に利用して、一般論に終始しないアイデアを生み出すことが重要です。

思考の整理には、平面的で量的なまとめではなく、立体的、質的な統合を考えなくてはならない。この本で、着想の醗酵などについて、ことに詳しく考えてきたのは、この点を考えたからである。これを思考の純化と言い換えることもできる。

本書は、グライダー型人間を卒業して、飛行機型人間になることを推奨しています。
グライダー型人間とは、自分だけの力で飛び上がることができない人を指します。飛行機型人間とは自分だけの力で飛び上がることが出来るひと。コンピュータという最強のグライダーがある現代では、あなたは飛行機型人間になるしかありません、と本書は問いかけます。