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ラジオのこちら側で/ピーター・バラカン

MTV世代の40代にとって小林克也ピーター・バラカンは特別な存在です。両氏とも洋楽のプロモーションビデオを紹介する番組のMCとして日本の洋楽カルチャーを牽引した人物。アメリカのヒットチャートを紹介する小林克也の「ベストヒットUSA」、ヒットチャートに縛られずにピーター・バラカンが良いと思う楽曲を紹介する「ポッパーズMTV」。両番組とも最新の洋楽情報を得る番組として欠かせない番組でした。

ビルボードのヒットチャート上位の楽曲をダイジェストで放送するベストヒットUSAに対して、ポッパーズMTVはイギリスの新譜を中心にプロモーションビデオをカットすることなく放送することを信条にしていたようです。一般向けのベストヒットUSA、ツウ向けのポッパーズMTVというそんな住み分けでした。

私は、アメリカのヒットチャートにはあまり興味を持てなかったので、ピーター・バラカンが紹介する新しい音楽にいつもワクワクしていたものです。その後、擦り切れるほどアルバム聞いたミュージシャンの多くは、この番組で知りました。
JAPANのTin Drum、トム・ウェイツのDown Town Train、Talking HeadsのOnce in a Lifetime、エルビス・コステロのI wanna be loved、SpecialsのGhost Townなどなど、、、Joy DivisionのLove Will Tear Us ApartもポッパーズMTVで最初に見たはずです。(40歳も半ばを過ぎも私のヒーローはClashのジョー・ストラマーであり、Joy Divisionイアン・カーティスです)

4半世紀前、わたし達の世代が音楽の情報を知るには、ラジオと音楽雑誌が全てという時代でした。上記の2番組を筆頭に洋楽を紹介する番組はありましたが、たかだか1時間の番組で触れることのできる楽曲は7曲程度です。雑誌で気になるミュージシャンをチェックし、FM雑誌で気になるミュージシャンの楽曲が放送予定を調査、その番組から流れる楽曲をラジカセでカセットテープに録音する。
4半世紀前は、世にFM雑誌なるものが存在し、ラジオ局で放送される楽曲が事細かに記載されていました。ラジオは、音楽と触れ合うための大切なメディアだったのです。

本書は、私の音楽の嗜好に大きな影響を与えたピーター・バラカン氏の回顧録です。日本への来日から現在まで、ラジオとの関わりをメインにピーター・バラカン氏の半生が語られています。
シンコーミュージックへの就職、YMOの事務所であるヨロシタミュージックへの転職、ラジオのDJを始めたきっかけ、ポッパーズMTVの誕生秘話から、東日本大震災への思いや現在のラジオ業界の状況など、ピーター・バラカン氏の淡々とした語り口が聞こえてくるような本に仕上がっています。

時代の変革は音楽の形も大きく変えてました。ラジオ少年だった私もすでに50歳の足音が聞こえて来ました。久しく聞いていなかったラジオも聞く時間が増えています。ただし、ラジオを聞く機械はiPhoneでのポッドキャスト。ラジオにはテレビにはない暖かさや言葉では言い表せない「カタチ」があります。このラジオの「カタチ」を作る大きな材料は音楽の存在です。現在、ポッドキャストでは著作権法の関係で音楽を流すことができません。ポッドキャストでも、なんとか音楽を流せるようにしてほしいものです。

音楽の消費形態は大きく変化しました。アルバム主体の鑑賞から曲単位の消費になり、音楽そのものの存在が軽くなってしまったようです。ただ、音楽自体は何らその本質を変えていません。わたし達の消費の形態が変わってしまったのです。ラジオの役目も大きく変わる時期にきているのかもしれません。ラジオが大きく変わるため、インターネット時代でも音楽が社会に大きな影響をあたえることができるようになるため、著作権法の内容を大きく見なおして欲しいと思った一冊でした。

80年代のブリティッシュ・ロックが大好きだった人には、ご一読をオススメします。