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働く幸せ/大山泰弘

「働く幸せ」とは「マズロー欲求段階説」の中にあると見つけたり

日本理化学工業は、「日本で一番大切大切にしたい会社」の冒頭で紹介されている企業です。著者は、日本理化学工業の会長大山泰弘氏です。

本書では、「日本で一番大切大切にしたい会社」で十分に伝えきれなかった障害者雇用への思いや、経営理念が語られています。

障害者の雇用

日本理化学工業は、粉のでないチョーク「ダストレスチョーク」や粉のでないマーカー「キットパス」など、環境に配慮した製品の製作販売を行っている会社です。

昭和35年に知的障がい者2名を雇用してから、現在にいたるまで積極的に知的障がい者を雇用しています。現在、全従業員74人中55人が知的障がい者です。

間違わない作業の工夫

工場の作業は現場の責任者以外は障がい者で構成されたラインで行われます。知的障がい者だけで品質は大丈夫なの?と考えてしまいますが、作業を工夫することで品質は十分に確保できるそうです。

例えば、チョークに使用する材料の配合は、重さを間違えると使い物になりません。知的障がい者は数字で判断することが苦手ですので、色で判断させるという方法を行っています。材料を入れたバケツのふたに赤や青の色を付け、赤いバケツの材料の重さを量るときは、測りの赤い分銅を使う、青いバケツは青い分銅と。

大山氏はこのような工夫を行うことで、知的障がい者でできない作業はないと言います。

その人の理解力にあったやり方を考えれば、知的障がい者も健常者と同じ仕事をすることができます。彼らが「できない」のではありません。私たちの工夫が足りなかったのです。

私たちが仕事をしているシーンでも「あいつは仕事ができない」とか「あいつは間違いが多い」という場面に多く遭遇します。それは、その人だけを責めるべき問題ではなく、仕事に与え方の工夫が足りないだけかもしれません。

人が働く意味

大山氏は、最初から知的障がい者の雇用に積極的だったわけではありません。最初は、会社近くの施設から「働くことを体験させたい」との依頼を受けたためでした。最初は2週間だけの約束でしたが、数名の社員が「面倒を見るから雇って欲しい」と懇願されたために渋々雇用を決断しました。

問題を起こして「施設に帰すよ」と言うと泣いていやがります。施設にいる方が楽だろうに、どうして工場で働こうとするのかが理解できなかったそうです。

このことが大山氏は頭から離れずに深く考える日が続きました。そんなとき法事に訪れた寺の住職にこの話をすると次のように言われました。

「人間の幸せは、ものやお金ではありません。人間の究極に幸せは、次の4つです。その1つは、人に愛されること。2つめは、人にほめられること。3つめは、人の役に立つこと。そして最後に、人から必要とされること。障がい者の方たちが、施設で保護されるより、企業で働きたいと願うのは、社会で必要とされて、本当の幸せを求める人間の証なのです」

この言葉を聞いて、知的障がい者が真剣に活き活きと働いている意味を理解できたそうです。それからは、積極的な知的障がい者雇用に努め現在にいたります。

働く価値を見直す

マズロー欲求段階説」は人間の原始的な欲求を5段階に分類したものです。下から
「生理的欲求」、「安全の欲求」、「所属と愛の欲求」、「承認(尊重)の欲求」、「自己実現の欲求」と定義されます。

私たちが働くことで満たされる欲求は、「所属と愛の欲求」、「承認(尊重)の欲求」、「自己実現の欲求」です。本書で大山氏が述べていることは、知的障がい者にもこのレベルの欲求があって、これが満たされるべきだということであると理解できます。

これらの欲求は健常者だから求められるのではなくて、人間が本質的に持っている欲求なのであると思った次第です。
そこでふっと頭をよぎることは、障がい者とか健常者とか関係なく、「所属と愛の欲求」、「承認(尊重)の欲求」、「自己実現の欲求」をきちんと働き手に提供できることが、企業に求められる役務なのではないかと。また、バブル崩壊以後は、ここをきちんとやっている会社が減っているのではと考える次第なのです。

企業側が給与以外に「働く価値」を提供できるようにならなければ、日本はますます衰退の一途です。成長なき幸せは、どこにあるのかって、きっとここがポイントでしょ、ってわたしは言いたい。

本書の11ページに大山氏と昭和35年に採用した最初の障がい者の林さんのツーショット写真が掲載されています。この写真が本当にすばらしいのです。ぜひ、みなさんも本書を手に取って見てください。

本当にいい本。オススメです。

目次
  • プロローグ 知的障害者に導かれたわがが人生
  • 第1章 「逆境」を最大限に生かす
  • 第2章 働いてこそ幸せになれる
  • 第3章 地域に支えられて
  • 第4章 幸せを感じてこそ成長する
  • 第5章 「働く幸せ」を広げるために
  • 第6章 会社は、人に幸せをもたらす場所