悩む力/姜尚中

悩む力は、激動の時代を生きるための武器。この武器を手に入れるには、自分自身を強くしなければならない。

「悩む力」は、2008年に90万部という驚異的な部数を売り上げたベストセラー。
発売当初に読んだときは、著者が本書で何を言いたいのかをつかめずにいたのですが、再読し、ようやく自分なりの解釈を得ることができました。

本書は、マックス・ウェバーと夏目漱石の言葉から、現代人の生き様についてを考察します。彼らが何に悩み、どのような意味を導き出したのかを紐解きながら、わたしたち現代人のあるべき姿をあぶり出すことを試みるのです。

現代は、多くの価値観が崩壊し、生活を支えた神話が消滅しています。「多くの人が孤独感にさいなまれている」、「変化のスピードが猛烈に速い」、「不動の価値がほとんどない」、、、

マックス・ウェバーと夏目漱石が生きた時代も現代と同じ混迷の時代でした。彼らは時代に翻弄されながらも、生きる本質をつかむべく、深く悩み、そして苦しみます。その悩みは、自分、金、知識、愛、仕事、死と人生の基礎をなすものにわたります。

本書は、淡々と彼らの人生とその悩みを語っていきます。
本書には、悩む先にある答えは書かれていません。また、本書を読むことで読者の悩みが消えることもありません。

本書で著者が言いたいことは、様々な解釈が可能ですが、重要な主張は次の2点に集約できるでしょう。

(1)自分自身を信じる

ひとつ目は「自分自身を信じる」ということ。

自分を信じるしかない、「一人一宗教」的に自分の知性を信ずるしかないと思っています。

ただ、やみくもに自分を信じることはできません。自分を信じるためのに必要な武器は「知恵」を得ることです。

知恵とは、

物事の道理を判断し処理していく心の働き。物事の筋道を立て、計画し、正しく処理していく能力。「Yahoo!辞書より」

単なる知識ではなく、自分自身が知識をツールとして利用できる力が「知恵」です。
どのように生きるのかは、多くの先人の生き方やアイデアから得ることができます。それらをただ、知るだけでなく、応用し、利用する力。これを得ることで、悩みを越えることができるのです。

(2)社会の承認を得る

ふたつ目は「社会の承認を得る」ことです。

当然の如く、わたしたちは一人では生きてはいけません。自分以外の誰かの承認を得ることで、生きるための意味を見いだすことができるのです。
誰かの承認を得るためには、コミュニティに参加しなければなりません。家族、学校、会社、、、

そこで承認されることで、ようやく、自分自身の存在意義が見えてるくるのです。
では、承認されるためにはどうしたらよいのでしょうか。承認されるために筆者は、そこで働くことが重要だと言います。

働くことによって初めて「そこにいていい」という承認が与えられる。

「自分を信じる」こと、そして「社会の承認を得る」で、わたしたちは悩みから解き放たれるのです。

しかし、私たちの人生から悩みそのものがなくなることはありません。「自分を信じる」ことと「社会の承認を得る」ことは悩みを解決に導くための道しるべとしての役目しか果たさないのです。

悩む力は現代人の新しいOS

東日本大震災以降、日本は様々な神話が消え去りました。神話という見えない壁が消えた向こうの景色はただ不条理だけが広がっています。自分で打破することができない閉塞感の中でわたしたちは生きていかなければなりません。

筆者は閉塞感を打ち破り、現状を突破するには、悩むことでしか見つからないと説きます。

まじめに悩み、まじめに他者と向かい合う。

わたしたちは答えのない時代を生きています。
答えがない中で、前に進むための推進力は「悩む力」なのです。「悩む力」は、現代社会を生き抜く新しいOS(オペレーティング・システム)です。

「悩む力」を身につけることで、自らの進むべき道を照らし、激動の社会を生き抜くことが可能になるのです。

目次

序章 「いまを生きる」悩み
第1章 「私」とは何者か
第2章 世の中のすべてが「金」なのか
第3章 「知っているつもり」じゃないか
第4章 「青春」は美しいか
第5章 信ずるものは救われるか
第6章 何のために働くか
第7章 変わらぬ愛はあるか
第8章 なぜ死んではいけないか