超訳 論語と算盤/渋沢栄一

渋沢栄一は、日本資本主義の父と言われる人物だ。

日本最初の銀行である第一国立銀行を筆頭に、数々の企業の創立に携わる。主なものとして、日本興業銀行朝日生命保険、東京海上火災保険東京ガス東洋紡績清水建設王子製紙秩父セメントキリンビールアサヒビールサッポロビール、帝国ホテル、東京証券取引所などなど、、、

渋沢栄一は、およそビジネスとは理念がとかけ離れた「論語」に、ビジネスを行う際の行動規範を求めた。論語と算盤は、渋沢栄一のビジネスへの思いを込めた書である。

書籍まとめ

基本的な思想

渋沢は、道理にあい、国家・社会の利益になるのであらば、自分自身の利益にならなくとも実行するべきという。
道理が合うとは、「仁義道徳」と一致していることであり、仁義道徳に合わないことは、人として、行なってはならない。
仁義道徳にあう生き方を実践するには、次の2点に注意する。

    • 中庸(偏らず、常に変わらない、過不足がない)を心がける
    • 「忠恕(誠実と思いやり)」の精神を貫く

そのために、自分自身を客観的に評価しなければならない。

次の心がけるべきなのは自分を知るということである。その中には、ずいぶん自分の力を過信してしまい、高望みをしてしまう人もあるが、先を見すぎて自分の部を守ることを知らないと、とんでもない間違いを起こすことがある。

また、良いときも悪いときも、冷静な判断を心がける。

好調のときだからといって気をゆるめず、逆に失意のときには落胆しないようにし、いつも変わらぬ心がけでもって道理を分で進んでいくことが肝要である。

ビジネスとは何か

ビジネスは、常に仁義道徳に則って行わなければならい。誰かの役に立ってこそ、利益は生まれてくるのである。

ビジネスの本質つまり本当の利益の追求というのは仁義道徳に基づかなければ、決して永続するものではない、と私は考えるのである。

また、しっかりした投資があって、初めて儲けが出る。
投資に臆病になること無く、将来を見据え、投資する先をしっかりと判断し、投資できる人間こそが真のビジネスパーソンであるという。

よく集め、よく使う人こそ真に経済の何であるかを通じている人でと言えよう。

日本には、武士道がある。
グローバル化が進み、世界標準のビジネススタイルで、仕事をすすめなければならない現代においても、正しいことを求める武士道の精神を忘れてはならい。

どんな職業であろうと、どんな立場にあろうと、いつでも自分自身の力でもって進み、正しい道に少しでも反しない生き方をし、そして財を築き、繁栄をもたらしてい供養にしなければならいのだ。だからこそ、今こそ武士道をもってビジネス道としなければならない。日本人は、あくまで大和魂の発現たる武士道をもってして生きていかなければならない。

仁義道徳とビジネスは、決して相反するものではなく、仁義道徳にあったビジネスこそが成功するのである。

ビジネスを繁栄させるには

本書において書かれているビジネス大成の5ヶ条は、以下の通り。

    • 大局を見ること
    • 良く集め、よく使うこと
    • 行動すること
    • 他人の利益を盗まないこと
    • 勉強すること

自分個人のことは、いったん外に置き、あるべき姿を求めてこそ、繁栄の未来が見えるのだ。

わが事業については、一個人の利益ある仕事よりも、社会多数に利益を与えられるようにしなければならないと思い、その事業をしっかりと安定させ、繁盛させることに心を砕いてきたのである。

自分を高めるには

まずは、運命の存在を理解しなければならない。
渋沢は、人生において良いときもあれば、悪いときもあると考えた。自分の責任でなくても、悪い流れの中に追い込まれることはある。
悪い流れにいるときは、決して失望すること無く、じっと悪い流れが終わるのをまつ。

政治の世界やビジネスの世界で順当にその志を遂げていく人と、反対に何事もその意に反して失敗していく人があるのだ。わたしは、こういう後者の場合だけを真の意味で「逆境」といいたいのである。こういう人生もあるということだ。そしてこのような夏の逆境においても、孔子のようにひたすら学びつづけ、後生に役立つことを信じてがんばり続けて欲しいと願うのである。

また、好不調に一喜一憂せず、常に変わらぬ心でものごとにあたる。そして、常に学び、それを実践していく。
運については

運というのは結局自分から努力して開いていかなければ、決してつかんでいくことなど不可能な事であることに注意してもらいたいと思うのである。

成功と失敗

渋沢は、成功と失敗を次のように言っている。

成功とか失敗とかは、ただそのひとの真摯な人生・大事な人生の後にみの残ったかすのようなものである。

つまり、その場その場で、さまざまな評価を自身に下すことなく、与えられた仕事を真摯に、そして正確に進めていくことだ。
そうすることこそが、成功への唯一の近道となる。

だから、道理にしたがい事をなしていくものは必ず栄え、道理に反することをする者ははならず滅ぶ。人生の成功や失敗は、長い人生、価値の多い人生のおいて、出てはすぐ消えるあぶくのようなものだ。

感想など

当たり前のことを当たり前にやることほど難しいことはない。当たり前のことをやり続けるには、強い信念に支えられている必要がある。
渋沢は、その信念の原点を孔子の「論語」に求めた。迷ったときは原点に立ち戻れば良い。
私が仕事を進める上での原点は「論語と算盤」に求めるべきだ。

昨年の東日本大震災から1年。
政府や東京電力の対応には、心底立腹し、最近は日本人でいることに少しばかりの違和感を感じ始めている。
ノンフィクション作家の佐野眞一渋沢栄一の生涯を追ったドキュメント「渋沢家三代(文春新書)」で、現代日本の姿を次のように書いている。

栄一が我が国に健全な資本主義を根付かせようと決意してから約百二十年、日本の資本主義は、栄一をしてそういわしめるに違いないと思えるほどに頽廃、堕落してしまった。

事業(企業)は集金マシンではなく、サービス提供者でなくてはならないのだ。と、強く自身を戒める書となった。