新版 戦略PR 空気をつくる。世論で売る。/本田哲也

同じような商品なのに、いっぽうの商品ばかり売れて、もういっぽうの商品はなぜ売れないのか。
それは、商品の認知度が違うから売れ方が違うのだ。
情報があふれる現代では、従来の広告手法が役に立たなくなっている。
消費者の心に商品の印象を深く刻むには、戦略的にPRをおこなうことが必要なのである。

売れる空気が必要

ものが売れない時代

時代の変革により、ものが売れない時代に突入した。売れなくなった理由は「情報が伝わりにくくなっている」ためで、伝わらなくなった原因は次の2つに分類できる。

  • インターネットの普及による流通情報量の増加(2009年の総務省調査では過去12年で637倍)
  • 消費市場の成熟により「賢い消費者」が登場(情報を疑う)
情報を伝えるためのハードル

伝わりにくくなった情報を的確に生活者に伝えるため、情報の提供者は次の2つのハードルをクリアしなければならない。

  • 量のハードル ー 消費者に届く情報が多いため、自分の情報が取り出される可能性が低下
  • 質のハードル ー 信頼できる情報なのか、自分と関わりあいがあるのかが考慮される
売れる空気をつくる

ものが売れない状況下でものを売っていくには「売れる空気」をつくり出すことが重要になる。売れる空気とは「人々が暗黙のうちに共有する情報の集合体」のことである。
過去にブームとなった「ブートキャンプ」は次のような「売れる空気」がつくられていた。

  • メタボに対する意識の高まり
  • 安易なダイエットに対する疑惑
  • 有名人からの情報発信
  • ネットなどでのクチコミ

「売れる空気」がつくられることで、商品に対する「安心感」、「信頼感」が生まれてくる。この売れる空気を本書では、「カジュアル世論」と呼ぶ。

カジュアル世論とは

世論とは
  • 公共 − たくさんの人に関連がある
  • 共有 − そのひとにとって価値のある情報は共有される
  • 意見 − 共有されると意見が形成される

例えば、自宅のトイレの故障は「世論」にはならないが、故障の原因が製品の欠陥なのであれば公共性の高い情報となるため、世論になる可能性が高い。

カジュアル世論の事例

カジュアル世論は「気づきを与えて、買う理由を生み出す」ことが、その役割となる。直接的に「買って欲しい」と訴えるのではなく「あなたに必要ですよ」と、買わなければいけない理由を生活者に与える。

  • LG21乳酸菌入りヨーグルト − 「ピロリ菌」胃の壁を傷つける菌で日本人の50%が感染している。感染した場合は、除菌が必要になる。「おなかが痛いのはピロリ菌が原因。何とかしなければ」との認識が広がり、ヨーグルトはピロリ菌の解決策として認知された。
  • ハイボール − 店主導の配合、おいしくない水の利用、若い世代の酒離れなどの理由からウイスキーは長期にわたり低迷した。地域密着型の広告を通じて認知度を上げた。提供店に対しても正しい作り方を啓蒙し、ハイボールはおいしいとの認識を浸透させた。また、多くの人が飲み始めている、ハイボールが流行っているとの啓蒙をすすめて「飲みたい」雰囲気をつくった。
カジュアル世論をつくる3要素

カジュアル世論をつくるには次の3要素が必要になる。

  • おおやけ感 − その情報の公共性。みんながそのことについて語っている、みんなでその情報を共有している感覚がある
  • ばったり感 − 街を歩いていたらその商品をみかけたり、テレビやラジオからその情報が流れたり、雑誌や新聞にその情報について書かれていたりなど、、、意図していないところで、商品や商品の情報にふれる
  • おすみつき感 − 公共性の高い団体から認可・許可を得ている。有名人が使用している。など、著名な第三者のおすみつきを得ている

カジュアル世論は「戦略PR」を行うことで形成される。

戦略PRとは

広告がお金を出して広告枠を購入するのに対し、PRは各種メディアで記事として扱われる情報である。広告がおおやけ(公)度が低いのに対し、PRはおおやけ度が高いため信頼性はが高くなる。
ただし、広告と違って掲載内容については、掲載メディアの裁量となるためコントロールすることはできない。
戦略PRはPR活動を戦略的におこない、売れる空気をつくっていく活動である。単なるパブリシティ活動ではなく、戦略的に「テーマ」、「チャネル」の設定をおこなっていく。

戦略PRの実践

テーマ設定

テーマ設定は、「自分にいたいこと」より「みんなが興味を持っていること」を語る必要がある。
テーマの設定は次の方法で決定していく

  1. 商品の便益に関連しそうな世の中の関心事を調査
  2. 商品の便益を世の中や生活者の関心に合わせて翻訳
  3. 上記2つを結びつけてテーマを設定する
  4. テーマをニュースにするための材料を用意
  5. テーマを広げるための具体的なPRプランを策定
テーマ設定の事例

ある紙おむつのメーカーは吸収力・フィット感の高く、足が動かしやすい新製品を開発した。
この新製品を、使い勝手の良い紙おむつとしてではなく、赤ちゃんの安眠を助ける商品として戦略PR活動をおこなった。

  • 日本の赤ちゃんは欧米の赤ちゃんにくらべ夜更かししている
  • 夜更かししている情報をマスコミやブロガーに配信
  • 夜更かししている認知度を2ヶ月間で28%から51%まで引き上げる

この活動により、商品は赤ちゃんの睡眠を助ける商品として認知され、ヒット商品となった。

チャネル設定

チャネル設定は、カジュアル世論をつくるための活動で「おおやけ感」「ばったり感」「おすみつき感」をつくり出す活動である。
この3要素はどれひとつかけても説得力が落ちる。

おおやけ感

各種のマスコミを利用して情報の告知をおこなう。

  • プレスリリースの配信
  • ファクトシートの配布
  • メディア向けのセミナーの実施
  • パブリシティ調査・研究の発表
  • メディア・ツアーの実施
ばったり感

クチコミを利用して情報の拡散をはかる。

  • ブロガーへの情報提供
  • ブロガーへの商品提供
  • ブロガー会議、ブロガーイベントの実施
  • ソーシャルメディアへのコミュニティ活動
  • アルクチコミパネル(トレモア)の活用
おすみつき感

インフルエンサーを活用して信頼度を向上する。

  • 調査の慣習をおこなう
  • コンテンツの監修、商品企画の監修をおこなう
  • セミナーでの講演
  • イベントへの出演